2020年5月29日、「新型コロナウィルス感染症に対応中の医療従事者を含め、多くの皆様へ敬意と感謝をお届け」のため、ブルーインパルスが東京都心を飛行しました。
東京都心をブルーインパルスが飛行するのは、1964年の東京オリンピック開会式、2014年の旧国立競技場お別れイベントに次ぐ3度目です。
(都心以外の東京都としてみると、前年の2019年9月20日に、ラグビーワールドカップ 東京スタジアム 開幕戦でブルーインパルスが飛んでいます)
この東京都心におけるブルーインパルスの飛行を記録に残すため、このページを作成しました。
ブルーインパルスの飛行発表は、飛行前日
通常、ブルーインパルスの飛行は、航空自衛隊のウェブサイトで、数か月前から事前に飛行日が発表されます。
しかし、2020年5月29日の東京都心の飛行は、前日の28日に発表されるという、異例なものでした。
発表された内容も、
- 期日:令和2年5月29日(金)
- 場所:東京都
- 予定飛行経路等、細部については、明日、お知らせします。
と、シンプルなものでした。
これは、早い段階で発表すると、人が集まって密になる恐れがあるためでした。
2020年の飛行は、東京五輪聖火到着式に次ぐ2度目
2020年にブルーインパルスが飛行したのは、3月20日に宮城県松山基地周辺において、「東京2020オリンピック聖火リレー 聖火到着式」に次ぐ、2度目です。
4月~5月に鹿児島県・鹿屋航空基地、山口県・岩国航空基地、静岡県・静浜基地、山口県・防府北基地の各航空祭・フレンドシップデーでの飛行が予定されていましたが、新型コロナウィルスの影響で全て無くなりました。
そして、この東京都心のブルーインパルス飛行後、ブルーインパルスが飛行する大きなイベントは無かったため、2020年は2回の飛行に留まっています。
(例年であれは、20~30回程度のイベントで飛んでいます)
ブルーインパルス東京都心 飛行の概要
飛行当日・29日の10時過ぎくらいだったと思いますが、航空自衛隊のウェブサイトに、飛行時間やルートなどが掲載されました。
航空自衛隊のウェブサイトに掲載された飛行経路に、新型コロナウィルスの指定感染症病院の位置を入れたものが次の図です。
埼玉県の入間基地を出発したブルーインパルスは、東京都心にある特定感染症指定医療機関および、第一種感染症指定医療機関である、
- 東京都立 駒込病院
- 東京都立 墨東病院
- 公益財団法人東京都保険医療公社 荏原病院
- 自衛隊中央病院
- 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院
の上空を、2周する飛行計画でした。
なお、前日の5月28日夕方に、ブルーインパルスは入間基地に到着していました。
この他、このブルーインパルスの飛行概要は以下の通りです。
日程 | 2020年5月29日(金) |
飛行時間 | 12:40~13:00頃 |
イベント名 | 新型コロナウィルス感染症に対応中の医療従事者を含め、 多くの皆様へ敬意と感謝をお届け |
場所 | 東京都心部(先の図の通り) |
6機 + 安全確認・全般統制機1機
当日は、6機による編隊飛行でした。
航空祭のように、スモークで絵柄を描いたりすることはありません。
ブルーインパルス6機の他、周辺や飛行経路の安全確認と編隊飛行の統制及び、空撮を目的とした「全般統制機」が1機並行して飛んでおり、合計7機での飛行でした。
入間基地発着の動画を確認すると、それぞれのブルーインパルスの搭乗人数は以下の通りでした。
1番機:2名
2番機:1名
3番機:2名
4番機:1名
5番機:2名
6番機:2名
全般統制機:2名
計:12名
航空祭ではこのような全般統制機は飛んでいません。
後からご紹介させて頂く、YouTubeの航空自衛隊チャンネルにおいて、全般統制機からの動画が配信されています。
東京での飛行後、ブルーインパルスは4機編成に削減
ブルーインパルスは、1988年に運用が開始された、T-4という練習機の機体です。
2019年にこのT-4に搭載されているエンジンに不具合が見つかり、その修理のためブルーインパルスの展示飛行での台数が減らされて運用されていました。
2020年になってもこのT-4練習機のエンジン不具合の影響は続いており、練習機の不足によってパイロットの訓練に支障が出ています。
このような状況の中、ブルーインパルスとして使用している機種のエンジンを、パイロットの訓練に使う練習機に流用させるため、東京都心での飛行後はブルーインパルスが4機体制になると発表されています。
T-4は運用から30年以上が経過しており、エンジンの不具合による影響は深刻ですので、T-4練習機の後継機の話が、もっと出ても良いのでないかと思います
当日の飛行の様子
当日の飛行の様子は、YouTubeの航空自衛隊チャンネルで公開されています。
撮影機による、ブルーインパルスの飛行を上や横から撮影した、貴重な映像も入っています。
SankeiNewsの動画も綺麗にまとまっています。
この他凄いなと思ったのは、ANNnewsCHの動画。
ヘリコプターから撮影されており、入間基地方向から都内に入ってくるブルーインパルスから、飛行を終えて戻ってくるところまで、ノーカットで入っています。
動画の最後で、ブルーインパルスの引きの映像になるのですが、ブルーインパルスと安全な距離を保てるよう、物凄い望遠で撮影しています。
カメラが好きな方だと分かると思うのですが、望遠レンズで遠くを近くに写そうと思えば思うほど、フレーム内に入れるのが難しくなります。
実際、超望遠で撮影し、白い雲によってブルーインパルスが見えづらくなった3分43秒頃に、カメラマンの「見えねぇ」というつぶやきが入っています。
撮影しやすいようにヘリコプターの向きを変えなくてはならず、これは、プロの撮影だと思いました。
当日私は、東京駅と一緒にブルーインパルスが撮れたらいいなと思ってカメラを構えましたが、あまり上手く写せませんでした。
同じ東京駅だったら、KITTEの辺りから墨田区方面から来るブルーインパルスを狙うべきでした。残念。
飛行に要した費用は、約360万円と激安
例年開催されている航空祭でのブルーインパルス展示飛行にかかる費用は公表されていないのですが、東京都心の飛行では、当時の河野防衛大臣によって、
ブルーインパルスの燃料費、スモークに使う発煙油、随伴機と整備員を輸送するコスト、合計して約360万円です。
と公表されました。
激安ですね。
ブルーインパルスは、整備や維持だけでも、人件費を含めた固定費がかかります。
これは、東京都心を飛んだとしても飛ばなかったとしても、変わりません。
そのため、変動費分だけでみると、360万円という安いコストです。
仮に、どんなイベントでも400万円足らずでブルーインパルスが来てくれるのであれば、結婚式や地域のイベントで引っ張りだこではないでしょうか。
ブルーインパルスを見て毎回思うのですが、開催地によっては、数十万人が同時に空を見て喜ぶことができるイベントは、なかなか無いと思うのです。今回は東京都心ということで、100万人を超えた人が見たかも知れません。
花火のイベントでは、もっと人が集まるものもありますが、360万円の予算では全く足りず、会場周辺の警備にかかるコストも捻出できません。
東京都心を飛んだ日は、テレビや新聞で報道され、全国ニュースになっていますので、広告費換算したら数千万円になると思います。
医療関係者の手当に回してはという声?
東京新聞によると、
医療関係者の手当に回してはという声に、河野氏は「別物だ」と反論し、二回目の飛行や来年の五輪で披露する可能性も示している。
としています。
「医療関係者の手当に回してはという声」は、東京新聞自らが言っているような気もしますが、ざっと調べたところ、東京都の医療従事者は、
・医師:44,000人
・看護師:105,000人
・薬剤師:48,000人
・歯科医師:16,000人
・理学療法士:9,000人
と、数字が簡単に出てくる職種だけでも、22万人を超えます。
この他、保健師、助産師、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士を含めると、30万人前後になるのではないかと思います。
今回の費用360万円を、30万人と仮定した東京都内の医療従事者の手当に回したとしても、1人当たり 12円程。
医師を始めとして医療関係者は時給が高めなので、給料1分間分の手当にもなりません。
本当に医療従事者に対しての手当とするならば、予算規模はゼロが何個も違います。
全くもって経済観念が無いレベルの指摘だと思います。まぁ、さすがの東京新聞といったところでしょうか。
次回、東京都心を飛ぶのは、東京オリンピック?
ブルーインパルスが、次に東京都心を飛ぶとしたら、東京オリンピックでしょう。
新型コロナウィルスの影響で、2020年の開催は中止になってしまいましたが、2021年はぜひ東京オリンピックの会場を飛ぶブルーインパルスを見てみたいものです。
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